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渡辺信一郎『シリーズ中国の歴史① 中華の成立』を読みました

こんにちは。

先日ようやく表題の本を読み終わりました。

新書なので、そこまで厚くはないのですが、内容が内容なので割と時間がかかりました。

↓の本ですね。

 

中華の成立: 唐代まで (岩波新書)

中華の成立: 唐代まで (岩波新書)

 

 このシリーズは刊行が決まった時だいぶ一部界隈で盛り上がりをみせました。

というのも、切り口がこれまでの歴史書とはだいぶ違う形で著述することを目指すというものだったからです。詳しくはこれの冒頭を読んでもらえれば分かるのですが、ただ王朝の盛衰を述べるものではなく、国家の仕組みや外部からの影響も視野に入れて論じていくということに特色が見られるかと思います。

執筆者はいづれ京都大学出身なので、京都大学的な歴史の切り口にもなっているかと。

 

で、問題のこれです。既にレビューでもいろいろと言われていますが、まあ読みにくい。内容は非常に興味深く読めたのですが、一部の人しか楽しめないでしょう。逆にこの考え方こそ今の歴史学に求められているのかもしれませんが、ただの国家盛衰の話を思い描いて読み始めると肩透かしを食らうかと思います。良い踏み絵といったらそこでおしまいなのですが。

唐代というと日本が遣唐使を出したりだとか発布した律令が唐のものを組み替えたものだったりと影響を受けまくっていたということは教科書レベルでも書かれています。

そして世界史の教科書でも王朝がどのように成立していったのかについては細かく書いてありますが、本書の関心はそこではありません。

小国が分裂していた状態である「中国」がいかにして統一王朝を持つことができる「中国」になったのか、言うならば、国家を支える制度がどのように変化し、国家が大きくなっても制度がしっかり動くようになっていったのか、ということに主軸を置いて説明が進んでいきます。

本書の扱う時代といえば人によっては三国志項羽と劉邦のエピソード、キングダムで描かれる始皇帝の話など様々なエピソードに事欠きません(これは中国史全体に言えるものかもしれませんが・・・。)。ただ本書はそこはばっさりとカットしています。多くても見開き3ページほどの量しか説明されていません。

主軸ではないからです。大部分はどのように税を徴収したのか、行政機構がどのように時代に合わせて変化していったのか、といった行政システムについてこと細やかに説明しています。

これが非常に苦痛なのです。淡々と進められていき、英雄も何も登場しない。登場するのは行政システムの話だけ。学術書として取るならば非常に良いものなのかもしれませんが、一般向けの新書であることを考えると、少し固すぎるかなとは思いました。

ただ本書を読むことで国家において前の王朝が残した功績をどのように用いたのか、例えば古典礼制の活用、田畑の運営の失敗からの組み換えなど、試行錯誤の様子が非常によくわかります。むしろ、中国の国家は天からの承認(自分で天を奉ってるだけなんですが)と儒教的考えがないと運営できないのだということが改めて理解できたように思います。

儒教の思想を利用することで、前の王朝から権力を正しく受け継いだという解釈を生み出したんですね。そりゃだいじにするわけだ。これがないと正当性がないからね。

 

このシリーズはすべて買うつもりですが、興味のある人は面白く読み進められるかと思います。二冊目の↓

 

江南の発展: 南宋まで (岩波新書 新赤版 1805 シリーズ中国の歴史 2)

江南の発展: 南宋まで (岩波新書 新赤版 1805 シリーズ中国の歴史 2)

 

 も既に買っていますので、後々書こうかと思います。はてさて。

 

では今日はこのへんで。